確定申告の時期が近くなってくると、
友人に聞かれる質問第1位が
「◯◯って経費になるかな〜?」
です。
「それはなるんじゃないですか。」
とか
「それはさすがにならないですね」
などと答えたりします。
質問してくる人の中には「結構儲けている人」から、「ほとんど所得がないものの確定申告しなければならない人」までいますが、「◯◯って経費になりますか?」というのは割と共通の質問です。
とはいえ、基本的に難しい話ではありません。
「『お金を儲ける』ために使ったお金」が「経費」です。
この考え方で基本的にOKです。
でも、どうやってお金を儲けるのかは人それぞれです。
経費も多種多様なものになります。
そんな中、多種多様の経費があることをいいことに、世の中には悪い人もいるもので、
「どんな領収書だって経費にあげちゃえば、税務署はわからないから大丈夫だよ」
みたいなことを無責任に言う人もいます。
本当でしょうか?
時代錯誤な話です。
インターネットで多くの情報が発信されています。
どんな情報も隠し通すのはかなり難しい時代です。
従業員も関係者も都合よく秘密を守ってくれるでしょうか?
まず期待できません。
匿名の情報がネット上にたくさんあります。
税務署に裏を取られて問いつめられて逃げ切れる人がどれぐらいいるでしょうか?
「悪質だと懲役10年」という厳しい罰まである所得税法違反の前に逃げきれるでしょうか?
税務職員にちょっと脅かされたらだいたいの人はアウトです。
とにかく税金を払うからそれで許してほしいと思うのが関の山です。
所得税法 第6編 罰則 第238条
第六編 罰則
第二百三十八条 偽りその他不正の行為により、第百二十条第一項第三号(確定所得申告)(第百六十六条(申告、納付及び還付)において準用する場合を含む。)に規定する所得税の額(第九十五条(外国税額控除)又は第百六十五条の六(非居住者に係る外国税額の控除)の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした所得税の額)若しくは第百七十二条第一項第一号若しくは第二項第一号(給与等につき源泉徴収を受けない場合の申告)に規定する所得税の額につき所得税を免れ、又は第百四十二条第二項(純損失の繰戻しによる還付)(第百六十六条において準用する場合を含む。)の規定による所得税の還付を受けた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の免れた所得税の額又は同項の還付を受けた所得税の額が千万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、千万円を超えその免れた所得税の額又は還付を受けた所得税の額に相当する金額以下とすることができる。
3 第一項に規定するもののほか、第百二十条第一項、第百二十五条第一項(年の中途で死亡した場合の確定申告)、第百二十七条第一項(年の中途で出国をする場合の確定申告)、第百五十一条の四第一項若しくは第二項(相続により取得した有価証券等の取得費の額に変更があつた場合等の修正申告の特例)、第百五十一条の五第一項(遺産分割等があつた場合の期限後申告等の特例)若しくは第百五十一条の六第一項(遺産分割等があつた場合の修正申告の特例)(これらの規定を第百六十六条において準用する場合を含む。)又は第百七十二条第一項の規定による申告書をその提出期限までに提出しないことにより、第百二十条第一項第三号(第百六十六条において準用する場合を含む。)に規定する所得税の額(第九十五条又は第百六十五条の六の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした所得税の額)又は第百七十二条第一項第一号若しくは第二項第一号に規定する所得税の額につき所得税を免れた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
4 前項の免れた所得税の額が五百万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、五百万円を超えその免れた所得税の額に相当する金額以下とすることができる。
税務署も税金をとることについては一生懸命に働いています。
安易な気持ちでなんでもかんでも経費にして良いわけではありません。
税理士法人として目指すのは納税者に有利な「正しい申告」です。
では、そもそも、「個人事業主の経費」ってなんなのでしょうか?
少し考えていきましょう。
1.法人と個人の違い
「経費ってなんだろう?」
ということを考える時に、いきなり所得税法を調べる人がいます。
(興味がある人は読んでも良いのですが、とりあえず載せておきます。)
所得税法(必要経費)
(必要経費)
第三十七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
2 山林につきその年分の事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その山林の植林費、取得に要した費用、管理費、伐採費その他その山林の育成又は譲渡に要した費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
いきなりこれを読んでもちょっと分かりづらいですね。^ ^;
結構考え込んでしまいます。
ちょっと条文を見る前に法律に書いてないような、当たり前のことを押さえておきたいと思います。
それは、「法人と個人との違い」です。
「法人と個人との違い」
「法人」と「個人」は一体なにが違うでしょうか?
特に税法の知識はいらない普通の質問です。普通にだれでも答えられる事だと思います。
それは、
「生きている」
です。
・・・・
「なーんだ、そんなことか」
という声が聞こえそうですが、これが意外と大事です。
法人は食べたり飲んだりしません。眠ることもありません。
※「法人の従業員」が食べたり飲んだりするだけです。
なので、図にするとこんな感じで違いが出ます。
それで法人の出費は株主が認めれば全部経費です。
株主が認めないと背任ですね^_^;
図を見てわかる通り、法人は全活動が営業活動です。
しかし、個人は食べたり飲んだりします。どんな人でも眠ります。
つまり「事業活動以外の活動」が必ずあるということです。
これは大前提です。
税法に書いてはいません。法律上の決まりの話ではなくて、当たり前の話だからです。
時折、仕事熱心な個人事業主が
「自分は人生の全てを事業に捧げているから自分の出費全ては事業の経費だ!」
と熱心に語ることがあります。
でも、この円グラフの現実は万人に当てはまります。熱意で覆るものではありません。
個人事業者である以上、「人間として生きる」ための出費が必ずあるはずです。
生きている以上、0円であるということは、あり得ません。
「生活のための出費なんて0%だ!」と主張した時点で
「税金計算間違ってます!」と言っているのと同じです。
2.所得税法の規定
所得税は個人に対して課されるもので
法人税は法人に対して課されるものです。
法人と個人の違いは先に書いたように「生きていること」です。
そのことと関係するような所得税法の条文があるでしょうか?
法人税法と対比して見てみましょう。
(1)10種類の所得
「所得税法では所得を10種類に分けます。」
という話を聞いたことがあるでしょうか?
利子、配当、山林、不動産、事業、給与、退職、譲渡、一時、雑
という区分です。
この規定は個人が「生きている」ということと関係があります。
所得税法の条文
所得税法 第2条第1項21号
二十一 各種所得 第二編第二章第二節第一款(所得の種類及び各種所得の金額)に規定する
利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得及び雑所得をいう。
(利子所得)
第二十三条 利子所得とは、公社債及び預貯金の利子(公社債で元本に係る部分と利子に係る部分とに分離されてそれぞれ独立して取引されるもののうち、当該利子に係る部分であつた公社債に係るものを除く。)並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配(以下この条において「利子等」という。)に係る所得をいう。
2 利子所得の金額は、その年中の利子等の収入金額とする。
(配当所得)
第二十四条 配当所得とは、法人(法人税法第二条第六号(定義)に規定する公益法人等及び人格のない社団等を除く。)から受ける剰余金の配当(株式又は出資(公募公社債等運用投資信託以外の公社債等運用投資信託の受益権及び社債的受益権を含む。次条において同じ。)に係るものに限るものとし、資本剰余金の額の減少に伴うもの並びに分割型分割(同法第二条第十二号の九に規定する分割型分割をいい、法人課税信託に係る信託の分割を含む。以下この項及び次条において同じ。)によるもの及び株式分配(同法第二条第十二号の十五の二に規定する株式分配をいう。以下この項及び次条において同じ。)を除く。)、利益の配当(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配を含むものとし、分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)、剰余金の分配(出資に係るものに限る。)、投資信託及び投資法人に関する法律第百三十七条(金銭の分配)の金銭の分配(出資総額等の減少に伴う金銭の分配として財務省令で定めるもの(次条第一項第四号において「出資等減少分配」という。)を除く。)、基金利息(保険業法第五十五条第一項(基金利息の支払等の制限)に規定する基金利息をいう。)並びに投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く。)及び特定受益証券発行信託の収益の分配(法人税法第二条第十二号の十五に規定する適格現物分配に係るものを除く。以下この条において「配当等」という。)に係る所得をいう。
2 配当所得の金額は、その年中の配当等の収入金額とする。ただし、株式その他配当所得を生ずべき元本を取得するために要した負債の利子(事業所得又は雑所得の基因となつた有価証券を取得するために要した負債の利子を除く。以下この項において同じ。)でその年中に支払うものがある場合は、当該収入金額から、その支払う負債の利子の額のうちその年においてその元本を有していた期間に対応する部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額の合計額を控除した金額とする。
(配当等とみなす金額)
第二十五条 法人(法人税法第二条第六号(定義)に規定する公益法人等及び人格のない社団等を除く。以下この項において同じ。)の株主等が当該法人の次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額(同条第十二号の十五に規定する適格現物分配に係る資産にあつては、当該法人のその交付の直前の当該資産の帳簿価額に相当する金額)の合計額が当該法人の同条第十六号に規定する資本金等の額又は同条第十七号の二に規定する連結個別資本金等の額のうちその交付の基因となつた当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、この法律の規定の適用については、その超える部分の金額に係る金銭その他の資産は、前条第一項に規定する剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配又は金銭の分配とみなす。
一 当該法人の合併(法人課税信託に係る信託の併合を含むものとし、法人税法第二条第十二号の八に規定する適格合併を除く。)
二 当該法人の分割型分割(法人税法第二条第十二号の十二に規定する適格分割型分割を除く。)
三 当該法人の株式分配(法人税法第二条第十二号の十五の三に規定する適格株式分配を除く。)
四 当該法人の資本の払戻し(株式に係る剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの並びに出資等減少分配をいう。)又は当該法人の解散による残余財産の分配
五 当該法人の自己の株式又は出資の取得(金融商品取引法第二条第十六項(定義)に規定する金融商品取引所の開設する市場における購入による取得その他の政令で定める取得及び第五十七条の四第三項第一号から第三号まで(株式交換等に係る譲渡所得等の特例)に掲げる株式又は出資の同項に規定する場合に該当する場合における取得を除く。)
六 当該法人の出資の消却(取得した出資について行うものを除く。)、当該法人の出資の払戻し、当該法人からの社員その他の出資者の退社若しくは脱退による持分の払戻し又は当該法人の株式若しくは出資を当該法人が取得することなく消滅させること。
七 当該法人の組織変更(当該組織変更に際して当該組織変更をした当該法人の株式又は出資以外の資産を交付したものに限る。)
2 前項に規定する株式又は出資に対応する部分の金額の計算の方法その他同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
(不動産所得)
第二十六条 不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下この項において「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
2 不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。
(事業所得)
第二十七条 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
2 事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。
(給与所得)
第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
2 給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。
3 前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 前項に規定する収入金額が百八十万円以下である場合 当該収入金額の百分の四十に相当する金額(当該金額が六十五万円に満たない場合には、六十五万円)
二 前項に規定する収入金額が百八十万円を超え三百六十万円以下である場合 七十二万円と当該収入金額から百八十万円を控除した金額の百分の三十に相当する金額との合計額
三 前項に規定する収入金額が三百六十万円を超え六百六十万円以下である場合 百二十六万円と当該収入金額から三百六十万円を控除した金額の百分の二十に相当する金額との合計額
四 前項に規定する収入金額が六百六十万円を超え千万円以下である場合 百八十六万円と当該収入金額から六百六十万円を控除した金額の百分の十に相当する金額との合計額
五 前項に規定する収入金額が千万円を超える場合 二百二十万円
4 その年中の給与等の収入金額が六百六十万円未満である場合には、当該給与等に係る給与所得の金額は、前二項の規定にかかわらず、当該収入金額を別表第五の給与等の金額として、同表により当該金額に応じて求めた同表の給与所得控除後の給与等の金額に相当する金額とする。
第二十九条 削除
(退職所得)
第三十条 退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」という。)に係る所得をいう。
2 退職所得の金額は、その年中の退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の二分の一に相当する金額(当該退職手当等が特定役員退職手当等である場合には、退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額)とする。
3 前項に規定する退職所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 政令で定める勤続年数(以下この項及び第六項において「勤続年数」という。)が二十年以下である場合 四十万円に当該勤続年数を乗じて計算した金額
二 勤続年数が二十年を超える場合 八百万円と七十万円に当該勤続年数から二十年を控除した年数を乗じて計算した金額との合計額
4 第二項に規定する特定役員退職手当等とは、退職手当等のうち、役員等(次に掲げる者をいう。)としての政令で定める勤続年数(以下この項及び第六項において「役員等勤続年数」という。)が五年以下である者が、退職手当等の支払をする者から当該役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものをいう。
一 法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員
二 国会議員及び地方公共団体の議会の議員
三 国家公務員及び地方公務員
5 次の各号に掲げる場合に該当するときは、第二項に規定する退職所得控除額は、第三項の規定にかかわらず、当該各号に定める金額とする。
一 その年の前年以前に他の退職手当等の支払を受けている場合で政令で定める場合 第三項の規定により計算した金額から、当該他の退職手当等につき政令で定めるところにより同項の規定に準じて計算した金額を控除した金額
二 第三項及び前号の規定により計算した金額が八十万円に満たない場合(次号に該当する場合を除く。) 八十万円
三 障害者になつたことに直接基因して退職したと認められる場合で政令で定める場合 第三項及び第一号の規定により計算した金額(当該金額が八十万円に満たない場合には、八十万円)に百万円を加算した金額
6 その年中に第四項に規定する特定役員退職手当等と特定役員退職手当等以外の退職手当等があり、当該特定役員退職手当等に係る役員等勤続年数と特定役員退職手当等以外の退職手当等に係る勤続年数の重複している期間がある場合の退職所得の金額の計算については、政令で定める。
(退職手当等とみなす一時金)
第三十一条 次に掲げる一時金は、この法律の規定の適用については、前条第一項に規定する退職手当等とみなす。
一 国民年金法、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)、地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)、私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)及び独立行政法人農業者年金基金法(平成十四年法律第百二十七号)の規定に基づく一時金その他これらの法律の規定による社会保険又は共済に関する制度に類する制度に基づく一時金(これに類する給付を含む。以下この条において同じ。)で政令で定めるもの
二 石炭鉱業年金基金法(昭和四十二年法律第百三十五号)の規定に基づく一時金で同法第十六条第一項(坑内員に関する給付)又は第十八条第一項(坑外員に関する給付)に規定する坑内員又は坑外員の退職に基因して支払われるものその他同法の規定による社会保険に関する制度に類する制度に基づく一時金で政令で定めるもの
三 確定給付企業年金法(平成十三年法律第五十号)の規定に基づいて支給を受ける一時金で同法第二十五条第一項(加入者)に規定する加入者の退職により支払われるもの(同法第三条第一項(確定給付企業年金の実施)に規定する確定給付企業年金に係る規約に基づいて拠出された掛金のうちに当該加入者の負担した金額がある場合には、その一時金の額からその負担した金額を控除した金額に相当する部分に限る。)その他これに類する一時金として政令で定めるもの
(山林所得)
第三十二条 山林所得とは、山林の伐採又は譲渡による所得をいう。
2 山林をその取得の日以後五年以内に伐採し又は譲渡することによる所得は、山林所得に含まれないものとする。
3 山林所得の金額は、その年中の山林所得に係る総収入金額から必要経費を控除し、その残額から山林所得の特別控除額を控除した金額とする。
4 前項に規定する山林所得の特別控除額は、五十万円(同項に規定する残額が五十万円に満たない場合には、当該残額)とする。
(譲渡所得)
第三十三条 譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。
2 次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
二 前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得
3 譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。
一 資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)
二 資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの
4 前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。
5 第三項の規定により譲渡益から同項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除する場合には、まず、当該譲渡益のうち同項第一号に掲げる所得に係る部分の金額から控除するものとする。
(一時所得)
第三十四条 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。
2 一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。
3 前項に規定する一時所得の特別控除額は、五十万円(同項に規定する残額が五十万円に満たない場合には、当該残額)とする。
(雑所得)
第三十五条 雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。
2 雑所得の金額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。
一 その年中の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除した残額
二 その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額
3 前項に規定する公的年金等とは、次に掲げる年金をいう。
一 第三十一条第一号及び第二号(退職手当等とみなす一時金)に規定する法律の規定に基づく年金その他同条第一号及び第二号に規定する制度に基づく年金(これに類する給付を含む。第三号において同じ。)で政令で定めるもの
二 恩給(一時恩給を除く。)及び過去の勤務に基づき使用者であつた者から支給される年金
三 確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金(第三十一条第三号に規定する規約に基づいて拠出された掛金のうちにその年金が支給される同法第二十五条第一項(加入者)に規定する加入者(同項に規定する加入者であつた者を含む。)の負担した金額がある場合には、その年金の額からその負担した金額のうちその年金の額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額に相当する部分に限る。)その他これに類する年金として政令で定めるもの
4 第二項に規定する公的年金等控除額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。ただし、当該合計額が七十万円に満たないときは、七十万円とする。
一 五十万円
二 その年中の公的年金等の収入金額から前号に掲げる金額を控除した残額の次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に掲げる金額
イ 当該残額が三百六十万円以下である場合 当該残額の百分の二十五に相当する金額
ロ 当該残額が三百六十万円を超え、七百二十万円以下である場合 九十万円と当該残額から三百六十万円を控除した金額の百分の十五に相当する金額との合計額
ハ 当該残額が七百二十万円を超える場合 百四十四万円と当該残額から七百二十万円を控除した金額の百分の五に相当する金額との合計額
法人はどうでしょうか?
法人は基本的に1種類です。
「各事業年度の所得」に対して法人税が課されます。
法人はやはりこの円グラフのイメージです。
「なにかしらの収益を上げるために活動してますよね」
ということです。
それで法人の所得は基本的には1種類です。
でも個人は違います。
所得の種類も10種類です。税金の課し方も全然違います。
さらに非課税所得や、相続税法による贈与や相続まで収入が想定されています。
人として生きる上で「いろんな活動がある」ということは法律で定めてなくても当然の事実であり、その事実の上に税法があります。
(2)自家消費、家事関連費
自家消費(又は家事消費)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
所得が10種類という話よりも、少し専門的な言葉になります。
条文は次のようなものです。
所得税法の自家消費についての規定
(たな卸資産等の自家消費の場合の総収入金額算入)
第三十九条 居住者がたな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)を家事のために消費した場合又は山林を伐採して家事のために消費した場合には、その消費した時におけるこれらの資産の価額に相当する金額は、その者のその消費した日の属する年分の事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
「こういう時には税金を課しますよ。」
という規定です。
やはり、個人は事業だけやっているわけではなく
「生きていろいろなことを行なっている」
ということが前提になっています。
似たような言葉で家事関連費という言葉もあります。
(家事関連費についての条文)
(家事関連費等の必要経費不算入等)
第四十五条 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
二 所得税(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を行う居住者が納付する第百三十一条第三項(確定申告税額の延納に係る利子税)、第百三十六条(延払条件付譲渡に係る所得税額の延納に係る利子税)、第百三十七条の二第十二項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予に係る利子税)又は第百三十七条の三第十四項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予に係る利子税)の規定による利子税で、その事業についてのこれらの所得に係る所得税の額に対応するものとして政令で定めるものを除く。)
三 所得税以外の国税に係る延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税並びに印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の規定による過怠税
四 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による道府県民税及び市町村民税(都民税及び特別区民税を含む。)
五 地方税法の規定による延滞金、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金
六 罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料
七 損害賠償金(これに類するものを含む。)で政令で定めるもの
八 国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)の規定による課徴金及び延滞金
九 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定による課徴金及び延滞金(外国若しくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずるこれらに類するものを含む。)
十 金融商品取引法第六章の二(課徴金)の規定による課徴金及び延滞金
十一 公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)の規定による課徴金及び延滞金
十二 不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)の規定による課徴金及び延滞金
2 居住者が供与をする刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十八条(贈賄)に規定する賄賂又は不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第十八条第一項(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)に規定する金銭その他の利益に当たるべき金銭の額及び金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額(その供与に要する費用の額がある場合には、その費用の額を加算した金額)は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
3 第一項第二号から第七号までに掲げるものの額又は前項に規定する金銭の額及び金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の価額は、第一項又は前項の居住者の一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入しない。
今度は「家事関連費」という用語です。
特に定義はないのですが、
「人として生きる上でいろいろお金ってかかるよね」
という感じの趣旨だと思ってください。
こういう経費は必要経費には参入しませんということが規定されています。
生きるにはお金がかかることもあるということが書いてあるわけです。
一方で、法人にはそういう余地が全くありません。
100%営業活動しかしていないからです。
やはり、個人は「人として生きている」ということが前提になっています。
3.「違い」を踏まえての必要経費とは?
ここまでで、法人と個人の違いを踏まえました。
何度も書いていますが、個人は「人として生きています」。
それで、いろんな活動を行なっています。
「事業活動だけをしている」ということはあり得ません。
経費にもいろいろな経費があります。
・事業のための経費
・家計のための経費
・賃貸不動産のための経費
・マイホーム譲渡のための経費
いろいろです。
個人に課する所得税においては所得も1種類ではありません。
10種類に分かれています。
それで、所得計算の際には、所得を分けるだけでなく
・事業所得には事業所得のための経費
・不動産所得には不動産所得のための経費
・譲渡所得には譲渡所得のための経費
・仮想通貨にかかる所得には仮想通貨に係る所得のための経費
・家計のための経費
という感じで経費も区分しなければなりません。
ここまで来ると冒頭の質問に結構答えやすくなります。
たとえば、
「仮想通貨で大儲けした人が家の家財を全部イタリア製の家具に買い換えました。」
これは経費になるでしょうか?
「イタリア製の家具」は「仮想通貨の所得を得るための経費」ではないですね。
ただの家計における出費です。
区分が違います。
「◯◯って経費になりますか?」
さて、どの所得に対応する経費でしょうか?
家計に対応する経費でしょうか?
なんとなく判別できる気がしませんか?
完璧な判断でなくてもある程度のイメージはつかめると思います。
これだけで8ー9割の経費の判断はできると思います。
ここで疑問として残るのはおそらく、
①対応関係が大事ということはわかったけど、経費としてどういうものが一般的に認められるの?
②家事関連費と業務上の経費の両方に関係するような経費なんですが。。。これってどうなの?
③経費の判断指針ってこれだけ?
という点だと思います。
③だけ先に答えると「これだけ」ではありません。
- 家族への給料は経費にならない
- でも、ある手続きをすれば経費として認める
- 補助金をもらった時はどうだ
- 経費として税金を払ったときはどうだ
Etc
その他の例外として色々規定されています。というよりも、この規定を束ねたものが所得税法です。
ただ、ざっくりとは上記のイメージです。
4.なにが一般的なのか?
これは結構大事なポイントです。
分かりやすい事例を出してみますと、
①従業員に採用記念にボールペンを買ってあげた。
普通の話です。福利厚生費なり消耗品費なりでOKでしょう。
②従業員にお茶をお歳暮として送った。
これも普通の話です。これも福利厚生費なり、接待交際費でOKでしょう。
では、
③従業員にダイヤのイヤリングを買ってあげた。
これはどうでしょうか?
なんだか 「きな臭い。。なにか特殊な関係性があるんじゃないの?」となります。
事業経費とは言い切れない気がしませんか?
①〜③はすべて「従業員にモノをあげた」という事象です。
ただ、事業経費と認められる一般的な範囲かどうかということが問題になることがあります。
これについては
「ラインがここです!」
となかなか言いづらいものです。
世の中どんどん変化して生きますし、事業形態も様々です。商慣習も色々あります。事業主自身がだいたいはわかると思います。
問題になりそうな金額が少額であれば自分で判断しても問題はないでしょう。
ただ、ラインギリギリに感じるもので高額な経費がある場合には、現状ではネットの情報だけだと若干不安があることは否めません。
どうしても経験と知識が豊富な専門家が必要に思えます。税理士は守秘義務があるので多くを語りませんが、さまざまな商取引といろんな会社の取引をたくさん見ています。税務署が最近はなにがあると認めてくれるのかというのも実際見て、そして彼らと交渉して体感しています。
それで所得が大きくなってきて経費も大きくなってきたら税務リスクも大きくなりますから、必要に応じて税理士に頼るようにしましょう。
5.共通経費について
最後に家事関連費と業務経費が混在するケースについて考えて見ましょう。
自宅で仕事をしている人の家賃や水道光熱費が代表例です。
自宅で仕事をしている場合、家賃や水道光熱費は
事業経費と家事関連費のどちらにも属するものです。
図にするとこんな感じです。
これについては所得税法施行令の規定はこうなっていました。
所得税法第45条、第96条(家事関連費等の必要経費不算入等)
(家事関連費等の必要経費不算入等)
第四十五条 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
(家事関連費)
第九十六条 法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
二 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費
要するに
「基本的には家事関連費はダメなんだけど、業務上必要な部分を区分できたらいいよ」
ということです。
つまり大切なのは、「事業経費かどうか」だけではありません。
加えて
「明確な区分ができているか」
が重要になります。
共通経費である自宅家賃や自宅水道光熱費を仕事で使っているからって全額計上したらダメということです。明確に区分しなければなりません。(「100%事業用です」という主張は通じないことは上記で書きました。)
「明確な区分」はどうやったらいいんでしょうか?
基本通達には次のように書いてあります。
所得税法基本通達(家事関連費関係)
(主たる部分等の判定等)
45-1 令第96条第1号《家事関連費》に規定する「主たる部分」又は同条第2号に規定する「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定する。
(業務の遂行上必要な部分)
45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。
これも総合判定です。
- 業務の内容
- 経費の内容
- 家族及び使用人の構成
- 店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等
によって、明確に何パーセント業務上の経費かというのを算出する必要があります。国税庁のHPには下記のような記載があります。
ですから、交際費や接待費の場合、
取引先二人と納税者本人で食事をしたので
「3分の2を必要経費、3分の1を家事用の経費とする」
という区分をします。
自宅兼事務所の場合、「使用面積比で区分して何パーセントを必要経費とする」という区分をします。
明確な区分をしたらきちんとそのことを記録に残しておきましょう。何年も経過してから税務調査は来ます。その際に、なにも記録が残っていないと
「明確な区分がない」→「条文の要件を見たいしていない」→「必要経費として認めない」→「課税+過少申告加算税」
となってしまいます。きちんと明確に区分し記録を残しておきましょう。
どこまで厳密に計算すべきか、どの点が重要なのかといったことは業種や規模によって異なってきます。
金額が少なければある程度でいいでしょう。
ただ、経費の額が大きいと雑な計算で良いとは言い切れません。やはりこの点でも金額が大きくなってきたらいろんな業種の取引を見ていて、税務署とやりとりを多く行なっている税理士の助けを借りると良いでしょう。
だいぶ長くなりましたが
「◯◯って経費になるの?」
にこれぐらいのことを踏まえると、結構な判断ができると思います。
ぜひ自分でやって見ましょう。