働くと当たり前のように自分の給料から所得税が引かれます。
これって何なのでしょうか?
当たり前のこととして受け入れている人が多いですが、なんでそうなっているのだろうと最初は思ったのではないでしょうか?当然ですが学校では教わっていないと思います。
また、たまにですが、
アルバイトをしているんだけど、いい加減な会社で給料から全く所得税が引かれていない。。これって大丈夫なのかな?
そんな思いを抱いた人もいるのではないでしょうか?
かく言う私も以前勤務していた不動産屋では最初の1年、なぜだか源泉徴収がされていませんでした。社長に何度も聞いても源泉徴収というものがなかったのです。
その後、源泉徴収されるようになったのですが、一体あれはなんだったのでしょうか。
今となっては法律関係もわかるようになりました。
その辺のところを今回は扱いたいと思います。
《源泉徴収義務の規定》
給料から所得税を引くのはなんででしょうか?
当然ながらいくら雇用主でも給料から勝手に差し引くなんてことは許されません。
所得税法の第183条に
「給料払うなら支払いの時に所得税を徴収して国に納めなければならない」
と規定されています。
※184条にあるように「家事使用人」つまり家政婦さんやお手伝いさんに対する給料については税金を差し引かなくてもよかったりします。
「家事」なので「ビジネスじゃないからいいよ」といったイメージです。
なので、給料から所得税が差し引かれることについて、抵抗することはできません。
《源泉徴収しないと誰が怒られる?》
条文を見てわかるように、義務があるのは
「給料をもらう人」ではなく
「給料を支払う人」です。
要は会社です。従業員ではありません。
条文をどう読んでも「もらう人」には何もしようがありません。
「給料を支払う人は給料をもらう人と協働して所得税を納めなければならない」という条文ではないからです。
なので、「源泉徴収されていない」ということについて給料をもらっている人は全く心配する必要はありません。
とはいえ、源泉徴収されていないとしても所得税は消費税のように一律8%とか10%というように係る税金ではありません。
つまり給料の額に◯%をかけてその額を徴収するというわけではないということです。
・家族がいるいない
・他にも給料をもらっている会社があるない
そういった要素も加味して、月給から決まった額が差し引かれることになっています。
その差し引かれる額が表になったものが「源泉徴収税額表」というものです。
源泉徴収税額表
で検索すればネット上に公開されています。
「給料をもらう人」も自分の源泉徴収税額があっているかということを、ネット上で確認できるわけです。
この源泉徴収税額表をみると、他に給料をもらってないできちんと会社に書類を提出している人は月額88000円未満は所得税がかからないことになっています。
アルバイトであればそういうこともあるということです。
なので、
「源泉徴収されていない」ということがあっても、基本的には心配無用ですね。
それでも、
「給料を15万ぐらいあるのに源泉徴収されてない・・・」
という昔の私のような不安を抱えた人もいるかもしれません。
当時の気持ちとしては
もしや自分がもらっているのは給料じゃないの・・?給料明細って書いてあるけど。。
どうなのでしょうか?
《給料・・?》
正社員だけが給料というわけではありません。アルバイトでもパートでも給料は給料です。
条文も少しあいまいといえばあいまいなんですが、人件費については通常「給料」です。
雇用関係があって指揮系統があったら給料です。
指揮系統もなく自由に休んだり代わりに別の人が出勤できたりすれば、給料でなく「外部の人に仕事を頼んだ」となりますが、そうでもないなら会社の人がなんと言おうと税務署は「給料だ」とみなします。
なので、「給料だ」という人で源泉徴収がされてないという人は会社が悪いと思っていればよいでしょう。
税務署は従業員ではなくて会社に取り立てに来ます。
《確定申告必要?》
会社が源泉徴収しない分について「『給料』をもらった人」は自分で確定申告しないといけないのでしょうか?
・他に給料をもらってないし、他に収入もない
こういう方は確定申告の必要はありません。
条文でも給料が2000万円以下で
「源泉徴収されるべき場合」に該当した上で、
他の所得が20万円以下であれば確定申告は不要と書いてあります。
《まとめ》
会社側には従業員の所得税について結構な責任があることが伝わったでしょうか?
「会社を運営して従業員を雇うからにはそのぐらいのことをしてくださいね」というのが税法の会社を経営する人への要求です。「それが嫌なら人を雇わなければいいじゃないですか」というのが税法のスタンスです。強気ですよね。
※そして、一年分の従業員の所得税計算を行うのが「年末調整」というものです。ここできっちり計算してとりすぎていたものは従業員に返しますし、足りない分については年の最後の給料から徴収することになっています。年末調整について詳しくはまた別の記事で扱いたいと思います。
話は戻りますが、わたくしの以前勤務していた不動産屋では、結局1年間まったく源泉徴収をせず、年末の給料について年末調整もなかったので最終的に会社がスタッフの分の所得税を負担していました。
「お前たちの分の税金、払ってやったぞ」
と当時、社長は言っていました。
事実払ってもらったのですが、条文を読んでみると、
ただ「社長が所得税法を守っていなかったから払わざるを得なくなった」というだけみたいですね。
まあ、それでも払ってくれたのはありがたい限りでした。
いずれにしても、昔も今も、雇用関係がある給料をもらう従業員の側が自分の所得税について心配しないといけないということはありません。