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医療費の範囲:「医療費+アルファ」という定義

《医療費の範囲:「医療費+アルファ」という定義》

いよいよ「医療費ってどこからどこまで?」という本題です。

「病院の領収書だけじゃなく、薬局の薬もいいらしい」
「病院に行くまでの交通費も入るんだって」
「マッサージもいいらしいよ」
「入院費用はいいけど、ナースステーションへの謝礼のお菓子代はダメらしい」

おそらくいろいろな話を耳にすると思います。

そうなるといろいろと疑問が湧いてきます。
実際、国税庁のホームページでは、その疑問に答える質疑応答集がまとめられています。
医療費関係の質問も多いです。

困ったらネットで検索して見てみましょう。

ここでは条文から
ある程度の考え方をまとめておきたいと思います。

条文では次のように定義されています。

 

(医療費の範囲)所得税法施行令第207条
(医療費の範囲)
第二百七条  法第七十三条第二項 (医療費の範囲)に規定する政令で定める対価は、次に掲げるものの対価のうち、その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とする。
一  医師又は歯科医師による診療又は治療
二  治療又は療養に必要な医薬品の購入
三  病院、診療所(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)又は助産所へ収容されるための人的役務の提供
四  あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 (昭和二十二年法律第二百十七号)第三条の二 (名簿)に規定する施術者(同法第十二条の二第一項 (医業類似行為を業とすることができる者)の規定に該当する者を含む。)又は柔道整復師法 (昭和四十五年法律第十九号)第二条第一項 (定義)に規定する柔道整復師による施術
五  保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話
六  助産師による分べんの介助
七  介護福祉士による社会福祉士及び介護福祉士法 (昭和六十二年法律第三十号)第二条第二項 (定義)に規定する喀痰吸引等又は同法 附則第三条第一項 (認定特定行為業務従事者に係る特例)に規定する認定特定行為業務従事者による同項 に規定する特定行為
(医療費の範囲)所得税法施行規則第40条の3
(医療費の範囲)
第四十条の三 令第二百七条(医療費の範囲)に規定する財務省令で定める状況は、次に掲げる状況とする。
一 指定介護老人福祉施設(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第四十八条第一項第一号(施設介護サービス費の支給)に規定する指定介護老人福祉施設をいう。次項において同じ。)及び指定地域密着型介護老人福祉施設(同法第四十二条の二第一項(地域密着型介護サービス費の支給)に規定する指定地域密着型サービスに該当する同法第八条第二十二項(定義)に規定する地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護の事業を行う同項に規定する地域密着型介護老人福祉施設をいう。次項において同じ。)における令第二百七条各号に掲げるものの提供の状況
二 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第十八条第一項(特定健康診査等基本指針)に規定する特定健康診査の結果に基づき同項に規定する特定保健指導(当該特定健康診査を行つた医師の指示に基づき積極的支援(特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準(平成十九年厚生労働省令第百五十七号。以下この号において「実施基準」という。)第八条第一項(積極的支援)に規定する積極的支援をいう。)により行われるものに限る。)を受ける者のうちその結果が次のいずれかの基準に該当する者のその状態
イ 実施基準第一条第一項第五号(特定健康診査の項目)に掲げる血圧の測定の結果が高血圧症と同等の状態であると認められる基準
ロ 実施基準第一条第一項第七号に規定する血中脂質検査の結果が脂質異常症と同等の状態であると認められる基準
ハ 実施基準第一条第一項第八号に掲げる血糖検査の結果が糖尿病と同等の状態であると認められる基準
2 令第二百七条第三号に規定する財務省令で定めるものは、指定介護老人福祉施設及び指定地域密着型介護老人福祉施設とする。

《ポイント》

①いわゆる「医療費」とプラスαが条文で規定されています。

たとえば、
「病院、診療所又は助産所へ収容されるための人的役務の提供」となっています。
⇨「病院に行くための交通費」はこれになります。
表現からわかるように、「人的役務の提供」が要件なので自家用車で行った時のガソリン代は入りません。
また、「病院に収容される」が目的なので実家に帰るという目的地が違うものは対象になりません。

②医師による治療又は診療目的であること

美容整形や予防・健康増進目的のものは医療費控除の対象ではありません。

健康のためには「治療より予防」と言われます。
それはその通りなのですが、医療費控除の対象ではないということです。

眼鏡やコンタクトレンズは通常、治療のためのものではないので対象外になります。
湯治は熟語としては「治療目的」なのですが、「医師による治療」ではないので対象外になります。

③マッサージ、鍼、柔道整復師は国家資格ということもあり医療費控除の対象になります。

※治療目的のものが医療費控除の対象対象になるのであって、健康増進のためのマッサージ代は医療費控除の対象になりません。

④看護師等の療養上の世話も対象です。

入院費用なども医療費控除の対象になります。
在宅療養の世話の費用も入ります。

⑤助産師による分べんの介助も対象です。

妊娠関係ですと、定期健診や入院費用も対象です。
ちなみに妊娠中絶の費用も医療費控除の対象になります。

(助産師による分べんの介)所得税法基本通達73-7
73-7 令第207条第6号に掲げる「助産師による分べんの介助」には、助産師が行う保健師助産師看護師法第3条《助産師》に規定する妊婦、じょく婦又は新生児の保健指導も含まれるものとする。(平14課個2-22、課資3-5、課法8-10、課審3-197改正)

⑥治療又は療養に必要な医薬品の購入

これも範囲に入ります。
薬局の風邪薬代金も対象です。
「治療や療養」目的なので健康増進目的の健康食品の購入代金は対象外です。

⑦介護保健法に規定する居宅サービス等のうち一定のもの

居宅サービス等の全てではないので注意が必要です。
国税局のHPから調べて確定申告しましょう。

《一般的な支出額》

最後に、上記の項目に当てはまって医療費控除の対象と判断しても、注意すべき点が一つあります。

それは、
「その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とする。」
の部分です。

歯科の自由診療がこの基準でアウトになりそうなのですが、
国税庁は

「現在、金やポーセレンは歯の治療材料として一般的に使用されているといえますから、これらを使った治療の対価は、医療費控除の対象になります。」

と公表しているので必ずしもそうでないようです。

「何が一般的なのか」
税法のいろいろな場面で出てくる判断要素です。

いやらしい表現ですが
時代に合わせて国税庁が質疑応答集を出してラインを明らかにしてくれています。
そうしたラインを基準に判断しましょう。

高額なものはダメということなので、
「『ブラックジャックに支払った手術代金2000万円』がこの基準でアウトです」
と言いたいのですが、
そもそもブラックジャックは無免許医ですから、
「医師による治療」に該当しないのでそちらでダメですね。

とはいえ、医師への謝礼の類はやはり医療費控除の対象にはなりません。

《まとめ》


一口に「医療費」といっても税法ではプラスαの部分が規定されています。
とはいえ、そもそも「医療費」です。「医療」つまり「治療のための費用」という原則が変わるわけではありません。

関係しそうな医療費の領収書はとっておきましょう。領収書がない交通費については医療費の領収書にメモしておくとよいでしょう。

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